想像
していた以上の力が出てくるものである。
ベンチャーというと、いかにも高度な技術力を活かすハイテク産業だけのように思われがちだ
が、通版事業もりっぱにベンチャー・ビジネスである。
企業が新しく多角化経営の一環として通版事業にのり出そうとしたら、優秀な人材をその業務
にあて、必勝を期すことが肝心である。個人として独立して通販をやろうとする場合も、旺盛な
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起業家精神( アントレプレナlシップ) に目覚め、新しいマーケットを意欲的に切り拓いていく
ことだ。ということは未知の分野に果敢に挑戦していく必要がある。通信販売はいつでも自分の
方から
H
創っていくH ビジネスであることをキモに銘じたい。
商品も、顧客も、そしてサービスも、やり方もすべて新しく自分なりにつくっていくしかない。
それだけに難しいともいえるが、反面、自力で開拓していくビジネスだけに限りなく楽しく、お
もしろ味もあるといってよい。
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その楽しさ、おもしろさが出てこないうちに苦しきゃ難しさに負けてしまっては通販というロ
マンのあるビジネスは成就しない。
ひたむきに考え、身体をフルに動かして行動してこそ
、
おのずと苦難も消え、楽しさが湧き上
がってくるわけである。そうなるまで絶対に屈せず、
やり通すことだ。それこそチャレンジ精神
が確かな解答を与えてくれる。
宗教思想家で教育者として知られる内村鑑三氏のこんなことばがある。
「お金や事業、そして思想などをこの世に残そうなどと考えないことだ。そんなものは残さなく
てもいい。しかし、その人だけしか残せない生き甲斐に満ちた生涯だけはきっちりと残しておき
たいものである」
「人間として.とう生きていくべきか」
中高年ともなると
、こうした問題に悩まされる。しかし、悩んでみたとしてもいい解決の道な
どみつかるわけではない。やはり生きがいのある人生は自分の力で切り拓き、創り上げていくし
かない。内村鑑三氏はその大切さをこのことばで教えているわけだ。
「通販ビジネスこそ自分に与えられた天職だ」と思ったら、ただその道一筋に成功するまで前に
歩き続けることだ。
⑩需要を自らの手でつくり出せ
通信販売を始めるにあたっての心構え
通信販売事業とは創造するビジネスである、と述べてきた。
「通信販売にふさわしい商品を揃えた」
「広告を打った」
それだけしてただ注文を待っているだけではラチはあかない。ジl ッと注文があがってくるの
を待つてなどいることなく、絶えず自分の方から需要をつくり出す努力こそ大切である。
そんな意味から私は「通販は創造のビジネス」だといったわけである。
小売庖経営者の中には「売れない」「お客が集まらない」とこぼし
、ぼやいている人が実に多
い。ところがよく考えてみると「売れない」のではなく、「売ろうとしていない」し、「お客が集
まらない」のではなく、「お客様を集めようと努力していない」屈がほとんどだ。
こんな他力本願で努力しようとしなかったらもはや絶望的である。
このことは通版事業でも同じことがいえる。
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「注文がない」「お客様が持付回してくれない」とこぼしているだけでは、事業の道は開けてこな
い。そんなことをこぼす前に、
「もっと注文してもらうにはどうしたらよいか」「お客様に注目さ
せるには何をやるべきか」を真剣に考え、実行に移すことだ。
そこで、まず提案したい。
通信販売という事業に限りないプライドと愛情をまず持つことだ。そこからおのずと新鮮なア
イデアや方法が生れてくる。そして、そのプラス発想が自然に新しい需要をつくり出してくる。
他がやっていない、自社だけの商品、サービスを持つようになったら、
新しい客層を自然につ
かんでくる。
創造経営がすぐ成果となって表われてくる可能性が通信服売にはあるので、それだけでも楽し
くやり甲斐のあるビジネスといっていいのでは;:: 。
⑪計数観念に目覚め、常に効率を追求する
H
損して得とれH
事業経営者にはこうした考え方も必要である。しかし、近代経営ではずさんな
H
どんぶり勘
定M ではすぐ破碇に追い込まれてしまう。というより、そんなずぼらなやり方では事業は成り立
たない。
事業経営をスムーズに進め、長く継続していくためには、学び、そして努力を重ねて売り上げ
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を伸ばし、適正な利潤を得ていかなければならない。
必要である。
そのためにも、たゆみない数字との格闘が
通信販売を始めるにあたっての心構え
これこそ経営の真の姿である。
特に通信販売は数字をおろそかにできない。庖舗販売ならいろいろな方法で人為的に売り上げ
を伸ばすことが可能である。ところが通信販売では顧客との聞に距離があるので難しい。現実の
数字が大きな頼りになる。
レスポンス率を高めるためにDM の発送を考えたとしよう。DM 制作料、印刷代、郵送代、テ
レマーケティングとしての電話料といった具合に、すぐ経費が数字となって出てくる。
それも少々でなく、高額な金が出ていく。そしてだいぶ時聞が経ってからやっと反応が表れ、
オーダーに結びついてくる。
高い経費を使ってもいっこうに反応がない場合だってある。
断言できることは、広告などにいかに投資できるかで販売効率も定まってくるということ。し
かし広告をしても売れないこともあるので、かなり不確実であることは否めない。
庖舗販売の場合は来庖客数、客単価などによって売上高がわかり、早自に採算がとれているか
どうかがわかるが、通販はそうはいかない。数字を細かくとらえ(商品仕入れに対する粗利、諸
経費を計算することで採算がとれるかどうかはっきりしてくる) 、それによって経営を進めてい
かなければならない。
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